タックスリターン入門 – ワーホリ・学生編

ワーキングホリデービザ、学生ビザの皆様のためにタックスリターンのやり方を有資格の日本人登録税理士、公認会計士事務所が解説

タックスリターン、税務順守

「タックスリターン」とは、日本語でいう確定申告のこと。収入にかかる税金のための手続きで、オーストラリアに滞在する人全員の重要な法律順守事項となります。

タックスリターンは法律で義務付けられており、返金額(リターン)があってもなくても申告しなくてはなりません。また、タックスリターンの申告義務がない人は申告義務なしであることを届け出る必要があります。手続きが難しそう、分からない、といって何もしないで放っておくのが最も危険なケースとなります。

※オーストラリアの会計年度は7月から6月。毎年7月から6月までの収入を7月から10月末までに ATO(オーストラリア国税庁)に申告します。例えば、2019年7月から 2020年6月までの収入分が2020年のタックスリターン対象となります。同じ会計年度内の全ての収入を1つのタックスリターンで申告します。例えば、6月30日と7月1 日に別々の給料が払われれば、それぞれ違う年度のタックスリターンで申告することになります。

※申告期限は毎年10月末。申告期限とはこの日を過ぎるとタックスリターンを申告できないのではなく、申告遅延、未申告による罰金、起訴の対象となるだけです。

タックスリターンって何?

リターンとあるので何かもらえるような気がしますが、日本語で確定申告という意味です。毎年7月から6月までの全ての収入を7月から10月末の間に申告します。タックスリターンは必ず7月を境に年度ごとに自分の得た収入を申告します。

つまり、同じ会計年度内の全ての収入を1つのタックスリターン手続きで申告します。 複数の職に就いていたとしても、仕事ごとに申告するのではなく、同じ会計年度の全ての収入を一回のタックスリターンで申告します。オーストラリアの会計年度は7月から6月です。

 

タックスリターンの手順

以下の手順に従って、タックスリターン手続きをしましょう。それぞれの手順のは以下の通り。

  • ステップ 1 タックスファイルナンバーの取得
  • ステップ 2 自分のタックスファイルナンバーを雇用主に伝える
  • ステップ 3 会社に給与の締めをしたか確
  • ステップ 4 タックスリターン申告手続き(毎年7月から)

 

銀行口座の「利息」も収入

タックスファイルナンバーと同じく、働くなら必ず用意しておかなければいけないオーストラリアの銀行口座。ANZ の Progress Saver、Online Saver、Commonwealth BankのNet Saver、Goal Saver、NABのSaving Account のような銀行口座にお金を入れていると、勝手に増えていることがあります。この増えた部分を「銀行利息」といいます。

給与ではありませんが、この銀行利息も収入ですのでタックスリターンで申告しなくてはなりません。銀行利息額はインターネットバンキングか銀行窓口で調べられます。インターネットバンキングのどこかに Interest(銀行利息)のページがあります。そこに Interest Summary というのがあり、その金額が一年で稼いだ利息額となります。、8月半ば以降であれば、国家資格を持つ登録税理士であるEzy Tax Solutions Japan で確認できることがほとんどです。また、銀行には自分のタックスファイルナンバーを必ず伝えましょう。

ステップ 1

タックスファイルナンバーの取得

タックスファイルナンバーって何?

タックスファイルナンバーとは、オーストラリアで生活する人に「1人につき1つ」発行される納税者番号です。ビザの種類などに関係なく1つの番号を一生使いますので、タックスファイルナンバーが記載された書類は必ず保管しておきましょう。

プライバシーに関わるためむやみに他人に見せたり盗まれたりしないように気をつけてください。スパムメールによる詐欺も流行っていますが、簡単に情報を開示しないよう注意しましょう。タックスファイルナンバーはオーストラリアで最も重要なプライバシーが詰まった番号です。

どうやって申請するの?

以下の ATO(オーストラリア国税局)のウェブサイトから、誰でも申し込むことができます。申請後、28日以内に郵便でタックスファイルナンバーが記載された 書類が送られてきます。そのため、申請時に登録する住所は郵便の受け取りが確 実にできる住所にしておく必要があります。

タックスファイルナンバーの申請方法は留学知恵袋を見てみましょう。

ATO と移民局が連携…どんな影響がある?

ATO が今後「移民局からビザ保有者の情報を入手する」と発表しました。

ビザ保有者情報とは、ビザ保有者の住所歴/ビザ保有者の連絡先/ビザの取得や申請履歴/ビザエージェントの詳細/オーストラリアの出入国歴/学生ビザの発行教育機関/ビザの種類などを指します。

ATO は、入手したこれらの情報をタックスリターン申告履歴とビザのマッチング出国歴による ABN の解除ビザ保持者の税務遵守の管理申告履歴、税金の支払いの確認ATO への債務とビザデータの結び付けなどに使用します。

これにより、皆さんにどんな影響があるのでしょうか?具体的には、キャッシュジョブと呼ばれる不法労働の発見納税者のビザの種類の確認ビザ保有者の未申告のタックスリターンや、税金未払いの発見が容易になることが予想されます。
いずれも、タックスリターン申告を正しく行ったり、税務遵守を心がけていれば心配する必要はありません。

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ステップ 2

自分のタックスファイルナンバーを会社に伝える

雇用者が皆様に給料を支払う際に、給料から税金を差し引き、国に納める必要があります。そのために、会社にタックスファイルナンバーを伝えておく必要があるのです。この時に納めた金額が多すぎた場合、後にタックスリターンの際に返金されることになります。

ワーキングホリデービザ保持者は必ず、 働き始めたら「自分はワーキングホリデービザである」と会社に伝えましょう。また、ワーキングホリデービザから他のビザを取得した場合も必ず会社に伝えましょう。

バックパッカー税が裁判により廃止

通称”バックパッカー税”という税法改正に伴い、2017年1月の収入からワーホリビザというだけで異なる税率が適応されるようになりました。しかし、2021年11月の裁判の結果、指定8か国からのワーホリビザ保持者に対してはこのワーキングホリデー特別税率が廃止となりました。

ただし、このバックパッカー税が課税されないのは税法上の居住者とみなされたワーキングホリデービザ保持者のみで、ATOは原則ワーホリビザ保持者は税法上の非居住者である、としております。税法上の居住者となるワーホリはオーストラリア人、永住ビザ保持者などと同じ税率となります。

ワーホリが居住者となるために、居住者として申告できる条件を満たすか、正しく申告するか、が重要となります。

 

キャッシュジョブと呼ばれる不法労働

ちまたでキャッシュジョブと呼ばれる仕事があります。つまり、スタッフに現金で給料を支払うことで銀行口座振込などの記録を残さず、会社はそのスタッフが働いていなかったことにすることです。

働いていなかったことにされるということは、もちろんタックスリターンの申告もできませんし、スー パーアニュエーションも支払われません。タックスリターンの申告をしないのでその人が「所得隠し」をしていることにもなってしまいます。多くの場合は、会社側が「スーパーアニュエーション(年金)を払いたくない」「最低賃金を払わずに誤魔化したい」という不正な動機が大きな理由となっているようです。

このような会社の存在がそもそもの問題ではありますが、雇われて働いている方も不法労働に加担していることになってしまいます。日本にいる外国人が水面下で違法な働き方をしていれば問題になることと同じ、と考えると容易に想像できるでしょう。

水面下の不法労働で税金がなくなると思っても、実は最低賃金をもらってなく、実際は税金を払うよりももらっていないという騙されているケースも多々ありますのでご注意ください。

ステップ 3

会社に給与の締めをしたか確認

タックスリターンで自分の収入が分からなくても大丈夫

雇われて働いた仕事の収入は雇用主がATOに報告します。仕事野収入に関しては特に何も必要ありませんが、雇用主の中にはきちんとしていない人もおり、その時のために給与明細(ペイスリップ)は保管しておきましょう。

Ezy Tax Solutons Japan はきちんと資格を持った税理士ですので、皆様の働いた会社がきちんとルールを守っていれば、皆さんの収入情報を ATO の登録税理士データベースより手に入れることが可能です。何もなくてもタックスリターン申告可能です。

よく分からないという場合はとりあえず待ちましょう。Ezy Tax Solutions Japan でなんとかできることが多々ですので、とりあえず申告期限の10月末前まで待ってみましょう。焦って申告するとむしろ時間がかかったり、後で ATO(オーストラリア国税庁)から連絡が来ます。

ABN で働く

ABN とは Australian Business Number の略で個人事業主として働く人のための番号です。ABN を持って働くこと自体は問題ではありませんが、ABN で働かせることで、スーパーアニュエーションの支払い回避、最低賃金の支払い回避のため、これを悪用する会社もあります。雇用でなく、ABN で働くよ う依頼された場合は注意が必要です。

ABN を元に収入を得ていた方は個人事業主になりますので、雇用者(会社)が給料のように面倒を見てくれることはありません。ご自分で収入記録を残しておく必要、責任があり、その記録を基にタックスリターンを申告します。

1人で「ABN での収入」と「他の仕事の収入」の両方がある場合は、全てを1回のタックスリターンでまとめて申告します。

ABNを登録している場合は、ABNでの収入があってもなくても申告が義務付けられます。

Uberも個人事業主の扱いとなりABNが必要で、ABNの収入となります。

 

ステップ 4

タックスリターン申告手続き(毎年7月から)

毎年7~6月までの収入を、7~10月末の間に ATO(オーストラリア国税局)に申告します。タックスリターンは必ず7月を境に年度ごとに申告します。つまり、6月30日と7月1日に別々の給料が払われれば、それぞれの異なる会計年度のタックスリターンで申告することになります。同じ会計年度内の全ての収入を1つのタックスリターンで申告します。複数の職を持っていたとしても同様です。

なぜタックスリターンをするとお金をもらえることがあるの?

リターンとあるので必ず何かもらえるような気がしますが、日本語で確定申告という意味です。タックスリターンによる返金は「自分が払い過ぎた税金が戻ってくる」ことであって、補助金をもらえるのではありません。このリターンは日本語で戻ってくる、という意味ではなく申告という意味です。タックスリターンがない、タックスリターンできる、できない、タックスリターンが少ない、タックスリターンが可能、不可能などは全ておかしな日本語となります。

会計年度内に稼いだ「税金のかかる収入の合計に対する税金額」と、「自分の給料から天引きされた税金額の合計」を比べ、後者が多い場合は本来払うべき税金より既に多く払っているため「差額が戻ってくる」のです。逆の場合は追加納税となり「足りない部分を支払う」ことになります。つまり、たくさん税金が天引きされていればタックスリターンで返金される額は多くなりますが、多く天引きされるということはその分手取り給与額が減っていた計算になります。よって、手取り額を増やすか返金額を増やすかという問題であり、結果的には損も得もしないことになります。

半年以上のコースを取る学生ビザ、居住者のワーホリの場合はオーストラリア人や永住者と同じ税率となります。

 

節税して、返金額を増やしたい、追加納税額を減らしたい

節税するために「経費」が役に立つことがあります。経費とは収入を得るための活動に使った費用のことです。代表的な経費は以下の通りです。

  • キッチンで働く際の調理道具
  • ファームでの農作業中の手袋、帽子、日焼け止め、サングラス、安全靴
  • ツアーガイドの携帯電話使用料の一部(端末本体代金を含む)
  • オフィスワークでの文房具
  • 購入したロゴ付きのユニフォーム

こちらに経費計上の情報が載っておりますので、ぜひご覧ください。

ただし、経費はその使ったお金自体がタックスリターンで戻ってくるわけではありません。
税金のかかる金額を減らし、引かれる税金額を減らすだけとなります。

300ドルを越える経費計上には全ての領収書の保管が義務付けられます。仕事のために何か買ったという場合は領収書、レシートを保管しておきましょう。また、仕事での利用が100%ではない場合は、私用利用分の%を除いた額で経費計上します。

仕事で使うからといって全てを経費計上できるわけではありません。経費計上できると思ってもできない例は

  • レストラン、オフィス、ファームで働くための黒いズボン、Tシャツ、普通の靴、男性のスーツなどの費用
  • お客様、同僚との接待、ミーティングの食事
  • 通勤にかかる交通費、車の費用

とにかく、仕事のために何か購入した、という場合はレシートを保管しておきましょう。

 

申告期限は?ー急ぎすぎないことがお勧め!

7月になったからといって、焦らなくて大丈夫。申告期限の10月末までに Ezy Tax Solutions Japan からタックスリターンを申し込めば問題ありません。

Ezy Tax Solutions Japan は資格を持った税理士事務所ですので、9月、10月頃になると皆さんの収入情報を ATO から調べられるようになります。しかし、7月や8月の早い段階ではそれらのデータがまだ ATO に届いておらず、皆様から提供される情報のみが頼りとなります。つまり、本人が全ての収入を申告した、と思っていても我々税理士が確認できないため申告漏れが起こる可能性があるのです。特に銀行利息が盲点となります。よって9月以降の収入データが ATO に届き始めた後に申告する方が安全です。

お申込みはこちらから。

タックスリターンの早期申告

タックスリターンは通常7月から6月までの収入を7月から10月末までに申告します。例えば、2019年7月から2020年6月までの収入を、2020年7月から2020年10月末までに申告する、ということです。

しかし、7月前にオーストラリアを永久出国(数年)済み、予定の場合は7月を待たずに早期申告が認められています。これは早期に申告 “できる” というだけで、早期に申告しなくてはならないわけではありません。通常期の7月以降に申告しても全く問題はありません。

「オーストラリアを離れたら、タックスリターン申告を忘れてしまいそうで不安」という場合には、早期申告をするのもよいでしょう。

オーストラリアで働くために、知っておきたいこと

最低賃金規定

税務遵守(税金のルールを守ること)に関わるものとして、「賃金規定」というルールがあります。最低賃金などのルールは、フェアワーク・オンブズマン(Fair Work Ombudsman)という政府の部署が担当しており、「会社が給料をきちんと払ってくれない」など、労働に関するトラブルが発生した場合もここに報告することにより解決できる場合があります。

最低賃金や労働規定は産業の分野によって細かく分けられており、自分が働いている産業の Modern Award という規約に書かれています。また、最低賃金は任されている任務のレベル、就業期間によっても違ってきます。ちなみにオーストラリアでは賃金が最も低い業種でも最低賃金は約17.70ドル(2017年6月30日時点)ですので、通称 ”バックパッカー税” の15%の税金を取られても日本の賃金よりはかなり高いことになります。

自分の最低賃金は政府のウェブサイト、Pay Calculator で調べることが可能です。会社がこの通りに給与を支払っていない場合、訴えることができます。

オーストラリアでの仕事 〜雇用形態と有給、病欠休暇

オーストラリアにはフルタイム、パートタイム、カジュアルという3つの雇用形態があります。この内、フルタイム契約者とパートタイム契約者には働いた時間数と比例して、Annual Leave(有給休暇)と Personal Leave(病欠休暇。病欠の際に仕事を休んでも、その分の給料が払われる)があります。

しかし、カジュアル契約者にはこれらの休暇がありません。その代わりにカジュアル契約者は賃金が25%増し (最低賃金も25%増し)となることが法律で決まっています。また、カジュアル契約の場合は雇用が守られず、明日から来なくてよいなどという会社からの解雇通告(退職させること)されることもあります。

よって、自分がどのような契約になっているのか、有給休暇はどうなっているのか、有給休暇がないなら、カジュアル契約としての賃金増しはされているのかをチェックしましょう。使わなかった有給休暇分は退職時に金銭として受け取ることになります。しかし病欠休暇は金銭としてもらうことはできません。

なお、どの3つの契約であっても、タックスリターン、スーパーアニュエーションに関するルールは全く同じです。

雇用者(会社)が不正をする、または手続きなどに対応してくれないトラブルの「報告先」

Fair Work Ombudsman
ATO(オーストラリア国税庁)
ATO 日本語ページ