昨今日本に帰る、子供を日本の学校に入れるなどといった日本への移住に関する内容や、オーストラリアに移住するといった場合、日本から相続があるなどの税金上のご相談をいただくことが多くなりました。
最近は永住ビザを取得し始めた世代が40代から50代に差し掛かり、両親の面倒を見るなどの理由も多く、それ以外にも子供を日本の学校に入れるため、配偶者の駐在、体調不良、日本で仕事が見つかったといったなど、オーストラリア育ちで大学や就職で日本に、など様々な理由でオーストラリアを離れる方がいます。また、日本にビジネスを持ったままオーストラリアに住む、駐在、留学、国際結婚、ワーキングホリデー、妻または夫と子供だけオーストラリアに住み、年に数回家族に会いにオーストラリアを訪れるといった理由などオーストラリアに来る理由も多岐に渡ります。
過去に数年オーストラリアを離れていたという過去の話もありますし、オーストラリアに住んでいて両親から相続したとか、日本の不動産を売った、日本の両親がオーストラリアの不動産を売った、日本に住んでいながらオーストラリアでビジネスをする、日豪デュアル生活などといった案件もあります。特にこの分野はオーストラリア人の税理士には縁がない分野で、これらのコンサルティングもよく行っておりますが、このように理由や背景は多岐に渡ります。
居住区分はあくまでオーストラリアの税金上
重要なのはこの居住区分というのはあくまで税法上、税金関係での居住区分です。
税法上の居住者、非居住者というのは必ずしも物理的にオーストラリアに住んでいる、滞在していれば居住者、していなければ非居住者という簡単な話ではありません。オーストラリアに住んでいなくとも居住者となる方はいますし、オーストラリアに住んでいても非居住者という方もいます。
一番分かりやすいのは1年から3年間オーストラリアに滞在できるワーキングホリデーの皆様です。オーストラリア1年、長い方だと3年もいるのにワーホリビザというだけで99%原則非居住者です。逆に、家族をオーストラリアに置いてイギリスや日本に単身赴任などという場合はオーストラリアに住んでいなくとも居住者となるケースが多々あります。両親の面倒を見るため日本に住んでいた、一時期日本に暮らしていたなどといった場合にも居住者というケースもあります。
税法上の居住区分はどのように判断するのか
これらははっきりとした線はなく、個々のケースにより変わってきます。
- オーストラリアに年間どれくらい住んでいるか、滞在しているか、訪れているか
- 家族はどこに住んでいるか
- どれくらいの期間オーストラリアを離れるか
- オーストラリア外に住んでいる理由、オーストラリアに住んでいる理由
- どこの国で育ったか
- 貯金、金融資産、不動産はどっちの国に多く所有しているか
- オーストラリアや日本に持ち家があるか
- ビザ
- 国籍
- どこの国で稼いでいるか、仕事しているか
- 今後の意志、計画、予定
などから総合的に判断します。これはバックグラウンドや資産、家族など個々によりいろいろなことをお聞きして判断します。
居住者と非居住者での税金の違い
ではなぜ、この居住区分が重要なのか。それは以下の2つです。
- 税率の違い
- 申告する収入の違い
税率の違い
オーストラリアの個人所得税(Income Tax)には3つの税率があります。居住者税率、非居住者税率、ワーホリ税率(廃止予定)です。
居住者税率
税法上の居住者に対する税率でも一番おなじみなものです。18,200ドルまで非課税枠(税金のかからない範囲)があり、課税収入により4段階の税率があります(累進課税制度=課税収入が上がると税率も上がる)。
非居住者の税率
非課税枠がなく、1ドルから課税されます。120,000ドルまではなんと32.5%も課税されます(銀行利息、株式配当除く)。外国に住んでいる外者なのでオーストラリアにいる人よりも高い税金を科すということです。ただし、銀行利息については10%の特別税率。
ワーホリ税率
ワーホリビザ、ワーホリからのブリッジングビザというだけでワーホリ税率が理由もなく課せられます。居住区分に関係なく45,000ドルまでは非課税枠なしの15%となります。この15%の中で、税率は同じでも居住者となるワーホリ、非居住者となるワーホリがいますが99%のワーキングホリデービザ保持者は非居住者です。しかし、ワーホリの場合、居住区分で税率が変わることはありません。
申告する収入の違い
居住区分により税金のかかる収入も変わってきます。
居住者
世界中の収入が申告の対象となります。日本などオーストラリア外の
- 投資収入
- 不動産収入
- ビジネス収入
- 給料
- 不動産や株の売買
- 年金
全てです。
ただし、永住ビザ、市民権のない一時滞在ビザの場合は申告対象から外れるものがあります。
ここで問題となるのが両方の国でダブルで税金を課税されることですが、これは日豪租税条約二重課税防止条項で日本で払った税金分オーストラリアの税金が減ります。
非居住者
基本的にオーストラリアで発生する収入のみ課税対象となります。例えば、日本での収入などオーストラリアとは関係ない収入については課税されません。逆に、日本在住でオーストラリアの賃貸不動産を持っている、といった場合はオーストラリアから源泉される収入ですので申告対象となります。
上記からなぜ居住区分が重要かが分かるかと思います。このように居住区分により
- どの収入を申告するのか
- どれくらい税金を取られるのか
が変わってくるからです。
オーストラリアの会社から日本にいる株主への配当、オーストラリアのトラストから日本にいる方へ配当するといったケースでも居住区分および配当の扱いは重要になってきます。
COVID19で日本に帰る、オーストラリアに戻って来れなくなった
現在のコロナ禍で起こっているケースとして、突然の失業で日本帰国、コロナウイルスが落ち着くまで日本に住もう、たまたま日本にいたらオーストラリアの入国制限で戻って来れなくなったなどいうケースがあります。
この場合の居住区分の判断は難しく、個々のケースによって変わってきます。前述のようにオーストラリアにいないから非居住者というわけではなく、日本にいてもオーストラリアのタックスリターンを申告しなくてはならない方もいますし、そうでない方もいます。未来のことは分からないため日本帰国などオーストラリアを離れる場合はタックスリターン申告をできる限り後にしましょう。税理士申告で期限は翌年5月15日となります。または後で修正申告することになります。
他の分野も同様ですが清くEzy Taxに相談しましょう。