ビジネスを始める際に最初にお金がかかるケースがあります。この最初の軍資金をゲットすることを資金調達といいます。
レストランやお店でいうと最初の店舗改装資金などです。また、軌道に乗るまでにある程度時間がかかる場合は、家賃や給料の支払いなどで資金が底をつき倒産となる可能性もあるため、最初にある程度の資金が必要となります。
何か始めたい時に自分がそのお金を持っていない場合は、この開業資金を工面する必要があります。渾身のビジネス・アイデアがあっても資金が無いと実現できなかったり、お金を貯めているうちに他人が自分のアイデアと同じことをするかもしれません。お金がないから、とケチって販売機会を逃すのも問題です。このように、
ビジネスをやりたいがお金が無い場合に、お金を外から調達してくる方法が融資と出資です。
最近日本でもブーム、ステータス、なんかカッコイイとして利用する人が多くなってきた“起業家”という言葉。誰でも起業できるのだから言ったもん勝ちで、「自分は起業家」です、と言う輩ほどあてになりません。エンジェル投資家などの投資家はお金を出してくれる人のことを指します。お金を出す方も出資や融資をしてお金を増やしたいという考えから、その人に掛けてみたい、応援したい、という気持ち的なものだったりと動機は様々です。
イマイチ意味が分かっていないのに、投資してくれる人、出資者募集、オーナーになってくれる人、などと使っている人も多いのが実情。同じお金を出すにも異なる大義名分があるのです。
融資と出資の両方とも人から得たお金を軍資金にするのですが、性質は大きく異なります。
融資、借入、お金を“借りる”
まず「融資」とは、お金を借りることです。お金の借入です。出資ではありません。
人や銀行からお金を借りると利息を払うのが普通です。家を買うのに銀行からお金を借りるのと同じです。ビジネスを始めるため、銀行、親、友達、他の会社からお金を借りるなどします。
ここで簡単に利息について解説しておきましょう。知らないと恥をかきます。例えば、ご自分がお金を持っていて、どうしてもあす発売のCOACHの新作バッグがほしいとします。しかし、友人なりが表れ3か月後に返すからどうしてもお金を貸してくださいと。貸してしまうとCOACHのバッグを明日買うことができず、返してもらう日の3か月後にやっと買えます。つまり、3か月間我慢しないといけません。しかも、返してくれないというお金を失うというリスクもあります。明日買うことができずこのウズウズした3か月の気持ちと、返してもらえないかもしれない危険の代償が利息です。私は我慢をしリスクを取るので、その代わり多めに返してください、というわけです。
ちなみにおまけですが、タックスリターンの返金というのは、国が本来の納税額より多い部分を預かっているお金の返金です。それが一年に一回タックスリターン申告で戻って来ます。一見うれしいことのように見えますが、この使えないお金を、しかも無利子で国に貸しているようなものなのです。つまり、タックスリターンの返金が多いというのは実は何もいいことではない、というのが分かるでしょう。逆にタックスリターンで追加納税として支払う羽目になる方は、自由に使えるお金を先にもらっており、足りない部分をタックスリターン申告後に納税します。ATOは(期限さえ守れば)利息を加算しません。つまり、追加納税になるというのは国から無利子でお金を借りているようなものなのです。詳しく知りたい方はタックスリターンの返金と追加納税のメカニズムをご覧ください。
さて、話は逸れましたが、貸し主が「利息はいらないよ」と言ってくれればラッキーです。しかし、なかなかそのようなケースはありません。お金を貸す側からすると、その間そのお金は使えない、ビジネスが潰れて返済してもらえない可能性があるのに、何のメリットもなくお金を貸すことになるからです。両親から利息無しでお金を借りられる人は、とても有利な立場にあることが理解できるでしょう。
貸す側のメリットはこの
利息を得ること
です。
ハイリスク・ハイリターンの原則から、未知数な部分が多い新しいビジネスにお金を貸す場合、利息は高くなるのが普通です。既に実績のある大企業にお金を貸すのと、今からビジネスを始める人にお金を貸すのとでは、どちらのリスクが高いかは明白でしょう。そのリスクを元に見返りを期待するのが普通です。
お金を借りたら、当然ですが返済(返す)義務があります。ただし、貸した側はお金を貸している以外の権利は何もなく、あるのは貸したお金を返済してもらう権利です。お金を返せば義務を果たしたことになり、関係性は無くなります。金の切れ目が縁の切れ目です。
ただ、この利息の支払いと返済は馬鹿にならず、ビジネスのキャッシュフロー(資金繰り)を苦しくします。よって安易に銀行から高い金利でお金を借りるというのは、よく考える必要があります。特に銀行は「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」というくらいあっさりしていますし、かなりの手数料も取られます。
返さなくてもいい出資、けどずっとくっついてくる
出資とは出資者にお金を出してもらうことを指し、出資者はビジネスの所有権を得ます。お金を出してビジネスの所有権(オーナーになる権利)をもらうだけですので、決まった返済もなければ、お金を返してもらう権利もありません。あるのは「ビジネスがこれだけ儲かりました、ありがとうございます。お礼に利益の一部をどうぞ」という配当です。出資を受けた人は、最初の数年のビジネスが軌道に乗る間は配当せず(お金を払わず)、余裕が出来た際に出資者に配当することが可能です。この配当は融資と異なり支払いの義務はありません。日本で株主優待券やお菓子が届くのは、この配当を払いたくないというためのただの誤魔化しのためという部分があります。
では、出資者のメリットは何かというとこの
配当とビジネスの所有権
です。
ビジネスが儲かればその一部を配当として享受することができ、ビジネスが大きく利益を上げれば出資額を大幅に上回る配当を手にする可能性があります。また、株式上場ということにでもなれば、ビジネスの所有権に値段が付き大金で売りさばくことができます。もしビジネスが不調なら、お金を出しているのに見返りがないと怒ることができます。オーナーなので経営に口出しが出来るのです。日本の株主総会でヤジが飛ぶ様子をニュースでご覧になった方もいるでしょう。これはビジネスの指揮を執っている経営陣のせいで、業績が悪く利益が出てねえじゃねえか=配当ないのかよ、配当これだけかよ、というヤジです。上場企業だと株価にも関わるため、業績悪くて自分の持っている株の価値が下がったじゃねえかよ、というヤジでもあります(こっちの方が大きいです)。
野球の好きな方は読売ジャイアンツをご想像ください。オーナーはあの有名な読売新聞社社長で球団オーナー、株式会社読売ジャイアンツ取締役最高顧問の渡邉恒雄氏、通称ナベツネと呼ばれる人です。この人がよくメディアに登場し、チームに関して話しているのを見ます。つまり渡邉氏は球団オーナー、会社で言う株主です。オーナーに選ばれてチームを指揮するのが監督、つまり会社でいう社長です。そして監督の下、全力になってチームの勝利に邁進していくのが選手、つまり社員です。球団オーナーの渡邉氏が最も権限を持っており、監督(社長)の解任も可能で、これは競馬の馬主、騎手、調教師も同じ関係です。
出資者側のデメリットとしては、ビジネスが儲からなかった時に見返りがないため、出資したお金がパーになる可能性があることです。出資する側としては儲かるか分からないビジネスにお金を払うので、出資前に吟味する必要が出てきます。そのためにビジネスプランの提示や、熱心なプレゼンなどで出資者にアピールする必要があります。これを行っていた「マネーの虎」というテレビ番組を記憶している方もいることでしょう。
出資が借入と異なるのは、上記の通り出資してもらう人には返済義務がないことです。デメリットとしてはビジネスが儲かっても出資者がビジネスのオーナーとなっている間は永遠に出資者と縁を切れず、利益の一部を持っていかれることです。オーナーの権利を手放さない限りずっと出資者はオーナーとして存在し続けます。
もちろん出資した方が100%ビジネスの所有権を握る必要もありません。ご自分と50%ずつとかご自分が70%で出資者が30%などということも可能です。また、契約で最初は融資で後から出資に切り替えたり、その逆があったりと途中で切り替えることも可能です。
ちなみに株に投資する、というのは株という会社の所有権を購入し、この出資をしていることをいいます。
なお、税金のお話もしておくと、
融資の際に支払う利息は税金上、経費計上が可能ですが、配当は費用ではないので経費にならず納税額には影響しません。