人によってはいつもより収入が増えるおかしなオーストラリアのコロナ禍補助。今回はJobSeeker PaymentやJobKeeper Paymentをもらうことによる税金上の側面です。
コロナウイルス補助金もタックスリターンで忘れずに申告
最初に、人によっては1回、人によっては2回のコロナ禍補助である750ドルのEconomic Support Paymentは非課税(税金がかからない)です。しかし、センターリンクからのJobSeeker Payment、Parenting Payment、それにくっついてくるCoronavirus Supplement、$550は課税収入(税金のかかる収入)です。政府からの補助金なのに税金がかかるの?と思う方もいるかと思いますが、これらはタックスリターンの申告収入です。ちなみに、ファミリータックスベネフィットは申告収入ではありません。下にまとめてあります。
給料としてもらうJobKeeper Paymentも課税収入です。というよりは、給料としてもらうので、いつもと変わらず雇用主からの給料として受け取ります。シングルタッチペイロールという雇用主がATOに従業員の収入を届けるシステムに組み込まれます。何も持たずに税理士のところに行きましょう。
タックスリターンは年度ごとでの申告で同じ年度の収入を1つの年度のタックスリターンで申告します。コロナ禍がオーストラリアで始まったのが3月半ば。仕事を解雇、一時無給になっている方は2019年7月から3月半ばまでの給料やビジネス収入と3月からの政府補助金やJobKeeper Paymentをまとめて申告することになります。もちろん、不動産収入や銀行利息など他にも収入がある場合はそれらもまとめて申告です。
補助金についてはコロナウイルス政府補助金 – JobSeeker VS JobKeeperから。
補助金別課税になるかならないか
- 750ドルEconomic Support Payment → 非課税
- 550ドル Coronavirus Supplement → 課税
- JobSeeker Paymentなどセンターリンクの補助 → 課税
- ビジネスが受け取るJobKeeper Paymentからの給料 → 課税
- ファミリータックスベネフィット → 非課税
- レントアシスタンス → 非課税
- スーパーアニュエーション引き出し → 今回のコロナウイルス不況の間のみ非課税
JobSeeker PaymentとJobKeeper Paymentの唯一の違いはセンターリンクからの補助金にはBeneficiary Tax Offsetという税控除があります。しかし、これはセンターリンクからの受給額が6,000ドルを越える場合のみ。
JobSeeker PaymentとJobKeeper Paymentの税金天引きの違い
JobSeeker PaymentとJobKeeper Paymentの違いとして起こるのが、税金の天引きです。上記にある通りJobKeeper Paymentは給料としてもらうので、いつもの給料同様、税金が引かれて残りを手取りとして受け取ります。1,500ドルって聞いたのに1,500ドルじゃないんだけど!という方はこの税金が引かれていることを忘れないように。
しかし、センターリンクからのJobSeeker Paymentはセンターリンクに頼まない限り税金を引かれません。これにより3月まで仕事をしていた方でJobSeeker Paymentをもらう方は場合によってタックスリターンで返金ではなく追加納税となります。もちろん、これは損も得もしていません。
税金のシミュレーション
3パターンに分けて例を見てみましょう。
2019年7月から2020年3月15日までの給料が56,000ドルの旅行会社勤務の桃子 トューグッドさん(Momoko Toogood)。残念ながらコロナウイルスによる仕事減で雇用主よりStand Downを切り出されました。幸い雇用主がJobKeeper Paymentに認可され、桃子さんをノミネートするということで、2週間に1,500ドルのJobKeeper Paymentを受け取れることになりました。雇用主が今まで通り税金の天引きをするので、2週ごとの雇用主からの受取額は1,200ドル。
2019年7月から2020年3月15日まで給料が56,000ドルのレストラン勤務の矢部 勘蔵(Kanzo Yabe)さん。残念ながらオーナーはビジネスを閉めることになり仕事を失いました。JobKeeper PaymentがもらえないのでセンターリンクのJobSeeker Payment、1,100ドルを受給します。センターリンクに税金の天引きを頼んでいないので、2週ごとのセンターリンクからの受取額は1,100ドル。
2019年7月から2020年3月15日まで給料が56,000ドルの客室乗務員の蓑田家 志零代(Shireyo Minotake)さん。航空会社破たんのため失業。JobKeeper PaymentがもらえないのでセンターリンクでJobSeeker Payment、1,100ドルを受給します。タックスリターンで支払うのが心配なためセンターリンクに税金の天引きを頼んでおり、2週ごとのセンターリンクからの受取額は748ドル。
この3人の税金とタックスリターンでの結果がどうなるか。単身、経費なし、その他の収入なしと仮定します。パートナー、配偶者、子供がいる場合は若干変わってきます。
桃子 トューグッドさん
仕事の収入 | $56,000 |
JobKeeper Payment | $9,000 |
課税収入 | $65,000 |
Income Tax | $12,672 |
Low Income Tax Offset | -$25 |
Low and Middle Tax Offset | -$1,080 |
Medicare税 | $1,300 |
税金額 | $12,867 |
給料からの税金天引き額 | $11,200 |
JobKeeper Paymentからの税金天引き額 | $1,800 |
総税金天引き | $13,000 |
タックスリターン返金額 | $133 |
矢部 勘蔵さん
仕事の収入 | $56,000 |
JobSeeker Payment | $6,600 |
課税収入 | $62,600 |
Income Tax | $11,892 |
Low Income Tax Offset | -$61 |
Low and Middle Tax Offset | -$1,080 |
Beneficiary Tax Offset | -$90 |
Medicare税 | $1,252 |
税金額 | $11,913 |
給料からの税金天引き額 | $11,200 |
JobSeeker Paymentからの税金天引き額 | $0 |
総税金天引き | $11,200 |
タックスリターン支払い額 | $713 |
蓑田家 志零代さん
仕事の収入 | $56,000 |
JobSeeker Payment | $6,600 |
課税収入 | $62,600 |
Income Tax | $11,892 |
Low Income Tax Offset | -$61 |
Low and Middle Tax Offset | -$1,080 |
Beneficiary Tax Offset | -$90 |
Medicare税 | $1,252 |
税金額 | $11,913 |
給料からの税金天引き額 | $11,200 |
JobSeeker Paymentからの税金天引き額 | $2,112 |
総税金天引き | $13,312 |
タックスリターン返金額 | $1,399 |
これを見ると分かる通り、JobSeeker Paymentより多くもらえるJobKeeper Paymentの場合、3月まで同じ収入でもその後のJobKeeper PaymentがJobSeeker Paymentより多いため、税金額は多くなります。JobKeeper PaymentにはBeneficiary Tax Offsetがありません。それでも一番手元に残るのは一番収入の多い桃子さんです。
3月までの収入が同じ矢部さんと蓑田家さん。両方同じセンターリンクからのJobSeeker Paymentを受給していますが、蓑田家さんは税金の天引きがあるため、毎回受け取る額は矢部さんより少なくなります。しかし、タックスリターン時に矢部さんは支払い、蓑田家さんは返金という結果になります。しかし、矢部さんも蓑田家さんも総収入、税金額は同じで、損も得もしていません。
税金が増えるからもらわないというのは本末転倒
上記のJobSeeker PaymentやJobKeeper Paymentがもらえる方はかなりラッキーです。条件から漏れもらえない方もいます。まして、自分のいつもの収入より多くなるというおかしなことが起こる方もいます。
いくら税金がかかり、税金が増えるとはいってももらった金額と同額の税金がかかるわけではないので、当然もらった方が得です。上記の3人の場合、センターリンクからのJobKeeper PaymentやJobKeeper Paymentにかかる税金は34%ほどで、残りの66%は自分の手元に残ります。
一体このお金はどこから来ているのか
今まで年収が25,000ドルや30,000ドルだった方は毎年払っていた税金は500ドルから1,500ドルほどです。20,000ドルほどだった方はゼロです。その方達の多くもこれらの補助の便益を受けることができます。逆に年収が150,000ドル方は毎年40,000ドルほどの税金を払っており、今回のコロナウイルスで仕事を失っていなかったり、減給、Stand Downになっていない、場合は何も政府からもらえません。ワーホリは20,000ドルしか稼いでなくとも3,000ドルもの税金を払っています。カジュアルで一年働いていない、かつパートナー、配偶者の収入が高いため、JobSeeker Payment、JobKeeper Paymentのどちらの条件からも漏れるという方もいます。
そして、実際に本当の収入減で困っている方がたくさんいます。
お前ズルい、あなたズルいは税金にも当てはまる – 税金の公平性
も参考になるかもしれません。
今回政府の補助の恩恵を受ける方はこのようなバックグラウンドも理解する必要があります。逆にコロナ禍後に自分が今度は皆をサポートする方に回れることを目指していくことも考慮に入れる必要があるでしょう。
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